「経営リスク削減のためにも、定着率向上のためにも労務リスクを削減したいが、何から手をつければいいかわからない」、「働き方改革関連法、その他労働法の改正に対応できているか不安」という経営者・人事労務担当者の方はまずは「労務監査」で現状を可視化することを推奨いたします。
【社労士が解説!】「年収の壁」が103万から178万へ?令和8年度税制改正大綱のポイントと企業への影響

ニュースで連日話題となっている「年収の壁」問題。「結局、うちはパートさんにどう説明すればいいの?」「会社の負担はどうなるの?」と不安を感じている経営者様や人事担当者様も多いのではないでしょうか。
令和7年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正大綱」において、基礎控除等の引き上げに向けた方向性が示されました。
今回は、社会保険労務士の視点から、この改正案が企業の人員配置や雇用管理にどのような影響を与えるのか、そして最も注意すべき「社会保険の壁」との関係についてわかりやすく解説します。
そもそも何が決まったのか?(178万円への引き上げ案)
今回の改正議論の目玉は、所得税が発生するボーダーライン、いわゆる「103万円の壁」の大幅な引き上げです。
具体的には、非課税枠を現在の103万円から「178万円」へと引き上げるという案が議論されています。この数字は、近年の最低賃金の上昇率や物価上昇に対応し、手取り額を増やすことを目的とした新しい仕組みづくりによるものです。
改正の仕組み(イメージ)
従来の「103万円」は、以下の2つの控除の合計額でした。
基礎控除(48万円)
給与所得控除(55万円)
今回の改正案では、これらの控除額を大幅に引き上げることで「年収178万円までは所得税がかからない」状態を目指しています。
※これはあくまで「税金(所得税)」の話です。私たち社労士が専門とする「社会保険」とはルールが異なる点に注意が必要です。
企業(雇用主)へのメリットと注意点
この改正が実現した場合、企業にはどのような影響があるのでしょうか。メリットだけでなく、現場で起こりうる混乱(注意点)も把握しておく必要があります。
【メリット】労働時間の増加による人手不足解消
最大のメリットは、パート・アルバイト従業員の「働き控え」の解消です。 これまで「103万円を超えないように」と年末にシフトを減らしていた従業員が、178万円まで働けるようになれば、1人あたりの労働時間が増加します。これにより、新たな採用コストをかけずに労働力を確保できる可能性が高まります。
【注意点】「社会保険の壁」は別問題!
ここで最も重要なのが、「税金の壁」と「社会保険の壁」は別物であるという点です。
「178万円まで税金がかからないなら、そこまで働こう!」と従業員が勤務時間を増やした結果、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入要件を満たしてしまうケースが予想されます。
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種類 |
年収の壁(通称) |
内容 |
今回の改正の影響
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税金 |
103万円の壁 |
所得税が発生する |
178万円へ引き上げ(予定)
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社会保険 |
106万円の壁 |
(特定適用事業所) |
現状維持または別途議論中
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社会保険 |
130万円の壁 |
扶養から外れ、自分で |
現状維持または別途議論中
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今後のスケジュールと企業がすべき対策
制度が実際に施行されるまでにはまだ時間がかかりますが、企業として今から準備しておくべきことは以下の3点です。
1. 従業員への正しい周知
従業員から「178万円まで働いていいんですよね?」と聞かれた際に、「税金はかからないけれど、社会保険の加入が必要になる可能性がある」ことを明確に説明できるようにしておきましょう。誤った認識のまま働かせてしまうと、後から「手取りが減った!」というトラブルになりかねません。
2. 給与計算システムの対応確認
控除額の変更は、毎月の源泉徴収税額に直結します。ご利用中の給与計算ソフトやアウトソーシング先が、新しい税制にいつ、どのように対応するのか、情報のキャッチアップが必要です。
3. 労働条件の見直しとシフト計画
「働き控え」が解消されることを見越して、既存スタッフへのヒアリングを行いましょう。「もっと働きたい」という意欲がある場合、社会保険加入を前提としたキャリアアップや、正社員化への転換を提案するのも一つの戦略です。
おわりに:複雑な制度変更は専門家へご相談を
今回の「178万円への引き上げ」は、働く人にとっては朗報ですが、企業の実務担当者にとっては「税金」と「社会保険」の2つの制度を混同せずに管理するという、高度な判断が求められる変更となります。
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「自社のパートさんは社会保険に入るべき?」
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「就業規則や雇用契約書はどう変えればいい?」
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「年収の壁・支援強化パッケージ助成金との兼ね合いは?」
こうした労働時間管理や社会保険適用に関するお悩みは、ぜひ私たち社会保険労務士にご相談ください。貴社の状況に合わせた最適な運用をご提案いたします。



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